書評
ナラティブ─患者の人生の物語へアプローチするための臨床的しかけの実践書
工藤 由美
1
1亀田医療大学看護学部
pp.285
発行日 2015年6月15日
Published Date 2015/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681201101
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いわゆる団塊の世代が定年を迎え,日本社会の高齢化と多死化のピークはすぐそこまで来ている。しかし,それをささえる地域医療体制の整備は十分とは言いがたい。医療保険(健康保険)と介護保険の関係も,うまく連携させることがままならない現状がある。しかも,医療,なかでも終末期医療は,科学だけを頼りにすれば,なんとも冷たいものになりかねない。死に行く者の,人間としての尊厳を守ることさえ難しい。本書は,そのような状況を転換し,終末期地域医療の新しい形を模索してきた著者の思いと実践の記録である。
本書は二部構成になっている。第一部は,多くの物言わぬ/言えぬ患者とその家族,著者と共にそうした患者・家族と向き合ってきた看護・介護の同僚たち,著者の考え方のよき理解者である上司,はたまた反面教師の同僚医師などとのさまざまな出会いをきっかけに形成され,ナラティブホーム構想へと収斂していく著者の思いと,その時々に展開された実践が綴られている。この部分は,2008年に『家庭のような病院を人生の最終章をあったかい空間で』(文藝春秋社刊)として出版されたものを再編集したものという。
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