オランダの研究から日本の看護師の専門的能力開発のあり方を考える

はじめに

　今回のJournal Watchでは，Journal of Nursing Management誌の第22巻3号，International Journal of Nursing Studies誌の第52巻5号の論文が対象になりました。今回から新たな年度となり，Journal Watchの対象となる学術雑誌を一部変更し，Journal of Nursing Management誌（JNM），International Journal of Nursing Study誌（IJNS），Nursing Research誌（NR），Japan Journal of Nursing Science誌（JJNS）の4誌が選定されています。今回はJNMより5篇，IJNSより3篇，合計8篇（質的研究2篇，量的研究5篇，混合研究法1篇）が発表され，議論が行なわれました。

　今回は，私が関心をもって選定した看護師の専門的能力開発の論文に関する議論を紹介します。この論文は，オランダの看護師の継続的な専門的能力開発の戦略を，若年，中年，高齢といった3つの年齢グループごとに探索した質的研究論文でした。本論文では，看護師は自身の関心やゴールといった成長への動機に応じて，専門的能力開発を行なうとされています。またLifespan psychologyの知見から，看護師の仕事への要望や態度は年齢の影響を受けるということが支持されており，このことから著者らは，加齢に伴うキャリアや私生活の変化といったプロセスが看護師の専門的能力開発に影響を与えるという前提に立って，研究に取り組んでいます。しかし先行研究では，異なる年齢層の看護師の専門的能力開発の戦略における違いについてはあまり知られていないことから，この研究ではBiographical Approachという方法を用いて，各年齢層の看護師が行なう継続的な専門的能力開発の戦略とはいかなるものかを明らかにしようとしています。