- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
日本遠隔医療学会は2006年7月に,「遠隔医療(Telemedince and Telecare)とは,通信技術を活用した健康増進,医療,介護に資する行為をいう」(日本遠隔医療学会,2006)と定義している。Telenursingに関しては,米国看護師協会(American Nurses Association[ANA], 1997),看護師州委員会全国協議会(National Council of Stage Boards of Nursing[NCSBN], 1997),国際看護師協会(International council of nurses[ICN], Miholland, 2000)でもそれぞれ定義されており,また,Telenursingと題する英語の書籍は,Telenursing : Nursing Practice in Cyberspace(Sharpe, 2001)と,Telenursing, Health Informatics(Kumar & Snooks, 2011)があり,その中で各々Telenursingを定義している。特に,Sharpeによると,Telenursingは,nursing informaticsとnursing scienceとthe art of nursingの融合体(Sharpe, 2001)と述べており,看護情報学nursing informaticsという領域の中でtelenursingは取り扱われることが多い。
一方,わが国では日本看護協会などにも「Telenursing」の明確な定義はなく,亀井(聖路加看護大学テレナーシングSIG, 2013)が「テレナーシングは,離れた場所にいる対象者に対し,遠隔コミュニケーション技術を用いて看護を提供すること」と定義している。本稿では,Telenursingおよびテレナーシングについて,日本遠隔医療学会がTelemedince and Telecareを「遠隔医療」と訳していることにならって,「遠隔看護」として述べていくことにする。
遠隔医療については,2011年3月に,総務省情報流通行政局地域通信振興課が,遠隔医療モデル参考書(総務省情報流通行政局地域通信振興課,2011)を作成している。その中で,情報の伝達・提供・共有を行なう関係者(医療従事者,介護関係者,患者等)によって,遠隔医療を大きく以下の3つに分類・整理している。
①医師間(D to D)のモデルは,僻地の診療所の医師が中核病院の専門医に診療上の相談をするなど,医師間で診療支援等を行なう。例えば,外科医が大学病院の病理医に検体データを送って病理診断を依頼するなどである。
②医師と患者の間(D to P)のモデルは,遠隔地の患者に対し直接医師が,伝送されてくる映像やバイタルデータを通じて診療や健康維持・向上のための助言を行なうもので,テレビ電話を通じて医師が在宅患者を診療するなどである。
③医師と患者の間を医師以外の医療従事者(コメディカル)が仲介する(D to N)モデルは,医師の指示等に基づきコメディカルが患者に処置を行なうなどである。
また遠隔医療の内容面では,医療行為または医師による行為(相談など)と,健康増進,介護・見守り,指導・教育など,直接的な医療行為にならないものとの2つに分けられる,ともしている。その意味から考えると,遠隔看護は,③医師と患者の間を医師以外の医療従事者(コメディカル)が仲介する(医師の指示等に基づきコメディカルが患者に処置を行なう)(D to N)モデルに位置づくものと考えられている。
本稿では,遠隔看護が遠隔医療や看護情報学にかかわる概念として,その歴史と研究の変遷を広く概観することで,遠隔看護の今後を展望する。
Copyright © 2015, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.