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はじめに
「遠隔看護(telenursing)」における情報技術の活用は,その先進国である米国において,1990年代以降に急速に進化し,21世紀に向けた多くの臨床応用の方法や,そのための法整備に向けた研究が多く行なわれてきた。英国においても,NHS(National Health Service)が,インターネットを活用したケア技術の開発など,国家的な健康施策として取り組み始めた。これら情報先進国の動向に関して,筆者は,2001年に本誌34巻4号焦点にて「新しい看護のパラダイムを拓く遠隔看護─その意義と世界の動向」と題し,報告を行なった(川口,2001)。
日本においては,2010年5月に内閣府より出された,「2020年までに,高齢者などすべての国民が,情報通信技術を活用した在宅医療・介護や見守りを受けることを可能にする」という提言を受け,IT基本法など,法的な整備が進められると同時に,今日に至るまで世界最先端のIT国家となるべく,「医療」「食」「生活」「中小企業金融」「知」「就労・労働」「行政サービス」の7分野に関して,重点的な取り組みが進められている。これによって,現在では米国や英国に劣らないほどの情報技術の進歩を果たし,国際的にも最先端の情報活用社会に向けた急速な進化を遂げている。
2011年9月発行のThe Lancet誌において,Tamiyaら(2011)が報告した日本における医療・保健分野の水準は国際的にもきわめて高いことが評価された。また筆者らは,同年にSpringer社から出版された『Telenursing』のChapter VI : Telenursing in Chronic Conditions(Kawaguchi, Azuma, Satoh, & Yoshioka, 2011)を担当し,世界の遠隔看護の比較と,日本の医療保険制度と遠隔看護について紹介し,国際的に高い評価を得ている。このような動きは,厚生労働省が提案する健康管理に関する将来構想とも一致し,日本での在宅医療の推進によって,遠隔看護技術がどのような方向で活用され,実用化されていくかについての期待は大きい。
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