特集 遠隔看護とイノベーション─在宅医療の新展開
遠隔看護の現在と在宅医療におけるその役割
川口 孝泰
1
1筑波大学医学医療系
キーワード:
遠隔看護
,
在宅医療
,
ICT
,
看護情報
Keyword:
遠隔看護
,
在宅医療
,
ICT
,
看護情報
pp.104-111
発行日 2015年4月15日
Published Date 2015/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681201072
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在宅医療を取りまく医療・看護の課題
1. 高度医療が進化する中での医学教育への警鐘
筆者は,「医学界新聞」2014年5月19日付(3076号)の記事を,看護学の未来の方向性と絡めて緊張感をもって読んだ。その記事は,医療人類学・文化精神医学のパイオニアとして,その名が知られているアーサー・クラインマン氏(ハーバード大学アジアセンター所長)による講演会の記事である。講演のテーマは,「ケアをすることについて(On Caregiving)─ケアに影響をおよぼす文化的要素」という臨床に直結した内容である。筆者には,この名称自体,医学教育が大きくパラダイムを転換しようとする予兆を感じた。と同時に,看護学が社会に発信する専門性に対するアピールの足りなさ,筆者自身の微力さを大いに反省させられた。クラインマン氏は,その講演で今日の医学・医療においてケアの占める重要性を,3つのパラドクス(逆説)で示した。
クラインマン氏の指摘したパラドクスの1つ目は,ケアは従来,医師の実践の中心をなすものとして定義されてきたはずであるというパラドクスである。現状の医療では,臨床からケアが乖離し,医学教育カリキュラムにおいても,ケアに十分な時間と資金が投入されなくなっていることを強調した。
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