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はじめに
わが国では,人口の急速な高齢化に伴う疾病構造の変化や食生活の欧米化により,疾病全体に占める糖尿病,虚血性心疾患,脳血管疾患,がん等の生活習慣病をはじめとした慢性疾患の割合が増加している。世界保健機関(WHO ; World Health Organization)でも,世界中で心臓病,脳卒中,がん,糖尿病などの慢性疾患が増大しており,2005年にこれらの慢性疾患で亡くなる数は3500万人に上り,あらゆる死因の6割を占めるとの推計を発表した(WHO, 2005)。
慢性疾患の増加は,病気や障害を有しても,できる限り住み慣れた地域や家庭で社会生活を送ることを希望する人々を増加させ,在宅医療の充実が求められるようになってきている。さらに,医療に対する要求は多様化しており,医療サービスはその質の高さや個々人に応じたものを選択できる種類や量が求められるが,在宅医療の質および量ともに,人々の要請に応えるだけのものに至っているとは言い難い。
そこで,在宅医療を支える新たな医療サービスとして,関心や期待が高まっているのが,遠隔医療(telemedicine,telehealth),遠隔看護(telenursing)である。これは,急速に進展している情報通信技術(information and communications technology;以下,ICT)の医療分野への応用として,厚生労働省や総務省が推進している事業でもある(厚生労働省,2002;総務省,2006)。特に,遠隔看護は慢性疾患が増加している現在,新しい看護の提供手段として注目が集まっている。また,厚生労働省は医療費削減のために,2008(平成20)年4月から,メタボリックシンドロームに対する保健指導の方法に,初回指導以外は情報通信機器による継続指導を認めた。そのため,日本における遠隔看護の実践は,今後ますます発展すると思われる。
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