焦点 Coping
解説
Lazarusのコーピング(対処)理論
本明 寛
1
1早稲田大学文学部心理学教室
pp.225-230
発行日 1988年4月15日
Published Date 1988/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681200971
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1.Lazarusのストレス観
私がLazarus氏と親交をもったのは,1960年代の終わりである。早稲田大学へ1年間客員教授として滞在されたことがご縁になった。当時から心理的ストレスという概念を盛んに用いていたが,氏はその後も一貫してこの概念の彫琢に努力されてきた。
Lazarusの主張は,脅威となるものの価値(threat value)を規定するのは人間の側の主観的事実であるとする点にある。すなわち,認知的評価(cognitive appraisal)をストレス過程の中に取り入れている。氏は"評価という語は,ある人の幸福にとって,ある出来事がどんな意味をもつかについての解釈の仕方のことを指す"と述べている。評価は自らある出来事が,自分と無関係と考えるか,快適なものと考えるか,あるいは有害,強迫的,挑戦的なものと考えるか,3通りの考え方がある。生理学者のいうストレッサーよりも,したがって広く生理的,心理的,社会的な意味を含めている。また,ストレスは必ずしも人間に悩みや苦しみをもたらせるというようには考えない。
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