焦点 人間を対象とする研究のむずかしさ
解説
研究のための対象把握の基本
島田 妙子
1
1東京白十字病院
pp.9-12
発行日 1984年1月15日
Published Date 1984/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681200776
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
4人で夜,レストランに行き,食事を注文した。注文を復唱したウエイトレスは,こちらが肉料理を4人分と言っているのに,「ハイ肉料理が1人分ですね,それから‥‥」とすましていた。1人分ではなく4人分だとアッピールしても,しばらくきょとんとしている。そしてハッとした顔をして「アア4人分ですね,失礼しました」と姿を消した。これは数分間のできごとであるが,こちらの注文をしっかり聞いているつもりだから,間違っているなどとは思ってもいないウエイトレスの姿を見ると,あの人はボヤッとしているとか,客の注文を聞いていない駄目な人と感じるより,4人分をどうして1人分と決めてしまったのだろうか,彼女は,われわれ4人の客をどのように観察したのだろうか,肉料理を注文するような客種ではなかったのだろうか,彼女の肉料理に対する価値観があって,4人分も注文するとは考えられなかったのだろうか,等々,注文を聞き違えたウエイトレスと私たちとの間を思いつくままに想像してみた。本人に確認したわけではないから,なぜ取り違えたのかはわからないのである。
Copyright © 1984, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.