焦点 人間を対象とする研究のむずかしさ
解説
研究の共有とコミュニケーション—臨床現場の研究を通してみて
雨宮 悦子
1
1神奈川県立衛生短期大学
pp.13-17
発行日 1984年1月15日
Published Date 1984/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681200777
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人間を対象とした看護の研究を進めていくためには,研究者にとって実践現場をもつことが必須となり,また,研究にとって欠かせない条件となる。特に,個々の人間,しかも病気という状況におかれた患者を対象とし,個別的な認識を重要とするような人間と人間現象への研究アプローチでは,なま身の人間を対象とするため,当然ながら大学や研究室で研究を行なうことはできず,研究者にとっては,研究の場を臨床現場の中にどのように求めるかが直面する課題となる。
一方,昨今の看護研究の一部には,医学をベースにしたものや,実態的な調査などにみられる従来の研究方法から,ようやくわずかに転換がみえはじめ,記述的,実践的アプローチを取りはじめているように思う。また,今日アメリカから紹介されている多くの看護論,方法論を日本の実践現場の中で検証することの可能性の論議をはじめ,実践を通しての研究の積み重ねや,研究と実践を結びつける努力など,研究者と臨床現場が連携をはかることの必要性が増大してきている。しかし,これまでも論議されてきたが,看護研究を発展させていこうとするとき,研究者と現場はどのように連携して研究の質を高めていくことができるのであろうか。表面的,形式的には常にその必要性が強調されるが,現実には多くの問題や困難性があり,今日の看護研究の発展を阻む要因の1つになっているのではないかと思う。
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