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はじめに
「卓越した若手研究者への支援は国のゆくえを左右する─世界の人材育成・獲得競争のなかで日本の改革への提言」(永野,2011)という論文タイトルを目にした。筆者は,この論文タイトルをみて,これこそ若手研究者支援の真髄であると判断した。加えて,ライフイノベーションが今後の医療の方向を変えるならば,ケアのイノベーションを起こさなければ人々の健康と安全,安心は成立しない。その意味で,看護の行方が危ぶまれることにもなる。まさにいま,それを担える看護学を基盤とした研究者の人材育成が必要となってくる。
2012年に行なわれた日本看護科学学会による「若手看護学研究者の研究実施状況に関する調査」〔日本看護科学学会(Japanese Academy of Nursing Science;以下JANS),2013〕で,研究活動の阻害要因に関する質問への自由記述の中に,「上司に『看護教員には研究は不要』と言われる」「上司に研究能力がない」など,職場風土の問題を指摘する声がある。いま,看護の卓越した若手研究者を育てることが日本の看護学の行方を左右すると自覚しているのは,将来の看護学の発展を常に考えているシニア研究者であり,看護の力,ケアの力によって救われる国民ではないだろうか。そのためにやるべきことは,若手研究者支援というシステム・イノベーションに取り組むことであると考える。本特集を待たずとも,看護学における若手研究者の人材育成と支援は少しずつ始まっていることは確かである。しかし本稿では,あえて,なぜ若手を育てる必要があるか,そしてどのように,どんな若手研究者を育てることが日本の看護学の行方にかかわってくるのか,考えてみたい。
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