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はじめに
看護ケアの質の向上は,近代看護の創始者であるナイチンゲールの時代から看護専門職がめざしてきた目標である。以来,現在に至るまで,さまざまな角度から取り組みが行なわれているが,なかでも医療や看護の質を,ある基準をもって組織的に評価し改善につないでいく,質の「評価」「保証」「改善」という統合したシステムやツールの開発が検討されてきた。1968年,Avedis Donabedianは,構造(structure),過程(process),アウトカム(outcome)という3つの評価方法の枠組みを初めて発表し,この枠組みは現在も質の評価の基本的枠組みとして用いられている。
質の向上をめざした取り組みの単位は,当初はヘルスケア組織内だけで行なわれていたものが,米国での病院標準化運動の高まりから,1951年にJCAH(Joint Commission on Accreditation of Hospital,現在はThe Joint Commissionに改名)が設立され,近代においてようやく第三者機関による組織的な医療評価が始まった。わが国ではそれから遅れること40年,1992(平成4)年に日本医療機能評価機構(Japan Council for Quality Health Care)の設立に伴い,ようやく医療機能評価が開始され,組織的質改善への取り組みが始まった。こうした第三者機関による質向上への取り組みは質「評価」にとどまらず,質に関するデータの蓄積とデータベースの構築,データの提供などを通して,ベンチマークなどの改善に向けた取り組みへと発展していった。
一方,組織内における質向上に向けたシステムの整備が進められ,quality management,あるいは,outcome managementといった概念が導入されるとともに,看護管理においては“看護ケアの質”が注目を集めるようになった。
近年において第三者機関による取り組みと組織内の取り組みが,ようやくリンクされるようになったといえる。
われわれ看護QI(Nursing Quality Improvement)研究会では,当初から質評価の結果を質の改善に結びつけられることを念頭に,評価ツールを開発した。そして,世界的な動向を踏まえた上で,質改善につなげていくためのシステム構築,データ蓄積とグッドプラクティスの提示,蓄積データを活用したベンチマーク,改善への動機づけシステムの構築へと研究を発展してきた。
本稿では,看護QI研究会の取り組みについて,第1期:看護ケアの質評価指標開発の段階,第2期:看護ケアの質評価システムを運用するための仕組みづくりの段階,第3期:質評価結果を改善につなげるためのシステムづくりの段階と,3つの段階に分類し,取り組みの経緯を振り返る(表)。
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