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“難病看護に携わっている”とはいうものの,私なんぞは,難病看護の第一人者として尊敬する川村佐和子先生(東京都立保健科学大学教授)の足もとには到底及ばない若輩者である。川村先生は,社会資源も制度も何もない時代から,人工呼吸器を装着した神経難病療養者の在宅療養は可能であるということを1例1例実証し,その支援を積み重ねてこられた豊富な経験の持ち主である。それゆえ,目からうろこが落ちるような教えを数々いただいた。その教えのなかには,グラウンデッドセオリー・アプローチと銘打たないまでも,先生の頭のなかではその手法を用い,理論構築をされてきたものが多々あったのではないかと思っている。
グラウンデッドセオリー・アプローチ(以下,GTとする)を用いた看護研究が多くみられるようになって久しいが,難病看護の分野も決して例外ではない。しかし,国内では難病看護の研究文献そのものの絶対数が少ないこともあり,またその多くは,会議録や厚生省あるいは厚生労働省の特定疾患研究班による報告書レベルというのがこれまでの実状であるため,今回クリティークを依頼された文献は貴重な1つである。
GTを用いた研究の評価にあたっては,その評価視点が確立されているとはいいがたく(木下,2003),またデータ収集や分析に参加していない第三者が正しく評価できるとは限らないとの指摘(Mellion & Tovin,2002;樋口ほか,1992)があるが,文献(木下,2003;Mellion & Tovin,2002;樋口ら,1992;瀬畠ら,2003;Backman & Kyngäs,1999)で提示されているクリティークの視点を参考にしながら,難病看護研究に取り組む仲間の1人として,大西論文についての誌上クリティークと難病看護研究に対する私見を述べさせていただく。
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