焦点 看護学における「生活者」という視点─「生活」の諸相とその看護学的省察
看護学において「生活者」の「生活」を描くための研究方法
「ライフストーリーの樹」モデル―専門家と生活者の場所と糖尿病のナラティヴ
やまだ ようこ
1
,
山田 千積
2
1京都大学大学院教育学研究科
2京都大学大学院医学研究科博士課程
キーワード:
ライフストーリー
,
ナラティブ
,
人生
,
場所
,
糖尿病
Keyword:
ライフストーリー
,
ナラティブ
,
人生
,
場所
,
糖尿病
pp.385-397
発行日 2006年9月1日
Published Date 2006/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681100151
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「慢性の病い」の語りとライフストーリー
医療では,患者に問いかけ,患者の訴えに耳をかたむけながら,アドヴァイスするコミュニケーションプロセスが,重要な役割を果たしている。「語る」「聞く」という言葉のやりとりは,医療の現場で日常的に行なわれている。しかし,医療者も患者も双方が「説明しているのに,わかってもらえない」という気持ちを抱えることが少なくない。「語る」「聞く」という簡単にみえるコミュニケーションは,「ことばの前のことば」を含む複雑な対話プロセスである(やまだ,1987,2006)。
医師や看護師など医療の専門家は,病状を「疾患(disease)」として診断し,治療し,ケアする。しかし,専門家と患者,互いの視点や立場の違いは想像以上に大きい。自己の思いこみにとらわれて,他者の視点に立てないと,互いのコミュニケーションはすれ違いが大きくなり,治療効果を上げられない。その多くの場合,医療側には患者の生活がみえていない(松岡,2005)。医療者は患者の生活,特にその当事者にとって病気がどのように経験されているのかを知らねばならない。つまり,当事者からみた病いの経験や意味づけ方,「病い(illness)」の語りを聞き取っていく必要がある(江口,2000;Kleinman,1988)。
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