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私は産科クリニックで夜勤をしつつ助産院の訪問看護ステーションに籍を置き,週末は鍼灸師として鍼灸院で仕事をしています。横浜の桜木町にある「せりえ鍼灸室」は,院長・副院長が長きにわたり妊婦さんの鍼灸治療にあたっており,神奈川の助産師の間ではちょっと名の知れた鍼灸院です。現在は私のほかに2人の助産師+鍼灸師がいて,日替わりで,妊活中〜妊娠中,産後の患者さんたちの相談に乗ったりもしています。私の尊敬する院長・副院長両先生のすごいところは,日々の臨床だけでなく鍼灸学校や業界団体で講師をし,テレビや雑誌の取材もこなし,なおかつ臨床研究もされている点です。2021末には,あのコクランライブラリーから研究内容の詳細を尋ねるメールが届き,ほとんど関係ない私がとても誇らしく感じてニヤニヤしていました。
その先生方が中心となり,4施設合同で行ったランダム化比較試験「成熟期女性の冷え症に対する温灸によるセルフケアの効果」の結果を紹介します。残念ながら対象は妊婦さんではないのですが,妊婦さんにも応用できる内容です。既存の冷え性尺度で判定した18〜39歳の49名の女性を対象に,レッグウォーマーを装着する群と市販の台座灸を使用する群に分けて4週間の比較を行いました。結果,レッグウォーマーもお灸も足の冷えは改善される傾向がありました。当然といえば当然なのですが,おもしろかったのは,お灸群は実施を終了してからも,症状がさらに改善に向かったということです。そして実際に使用したツボは三陰交・足三里・湧泉という膝から下にある3カ所だったのですが,肩こりやぐっすり眠れないという冷えに伴う症状の改善にも役立ったという結果が得られました。加えて,この結果は「毎日,地道にお灸をすえました」ではなく,「週に3回やってみました」程度の気軽さで得られたものでした。被験者は,最初にお灸のすえ方や注意点,ツボの場所について鍼灸師の指導を受けますが,実施するのは被検者ご本人。セルフケアで大きな効果が得られたのでした。
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