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緒言
近年の国際化に伴い,日本における在住外国人数は増加しており,総人口の約2%と過去最多である1)。このうち国籍(出身地)欄「韓国」「朝鮮」は約17%を占めており,日本の在住外国人のうち2番目に多い1,2)。先行研究では,在住外国人は日本人に比べ母子保健制度利用が低いこと3)や妊娠中の体重増加が多く,妊娠中の異常が多いこと4)などが指摘されている。在住外国人の母子保健制度の格差には言語5,6),文化7,8),医療制度の違い5,7)などがあるが,特殊な歴史的背景を経て日本に定住している「在日コリアン」に関しては,多くは言語的ハンディキャップがなく,母子保健医療の諸制度も日本人同様に適応されている9)。在日コリアンの人口構成は日本人同様に高齢化,少子化が急激に進んでおり9,10),乳児死亡率などの母子保健統計も日本と同様の傾向を示している10)。しかし,日本で生まれ育った在日コリアンは,生まれた時から日本人同様の生活を送っている者が多く,また名前に関しても通称名(日本名)を利用している者がいることから,出産施設でも在日コリアンと把握されていないことも多い。そのため,母子保健に関する指標を正確に把握している調査はなく,さまざまな母子保健に関連する統計も,日本人全体の数字に含まれており,実態が明らかになっていない。一方で在日コリアンの伝統的価値観は強く11),儒教的な精神の下での家族主義は,妊娠・出産・育児などの家族形成に影響することが予測される。そのため,他の在住外国人同様に文化的背景の相違や生活習慣の違いから,日本人とは異なる特徴があるのではないかと推測された。
そこで,本研究の目的は,在日コリアン女性の母子保健に関する指標と母子保健制度の利用状況について明らかにし,必要な支援について検討することとした。
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