特集 開業論――はじめての組織運営・援助実践ガイド
権利を保障/奪還する――在日コリアンのためのカウンセリング
朴 希沙
1
1在日コリアンカウンセリング&コミュニティセンター
pp.610-614
発行日 2025年9月10日
Published Date 2025/9/10
DOI https://doi.org/10.69291/cp25050610
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
私は2020年に日本で初となる在日コリアンのためのカウンセリング機関,「在日コリアンカウンセリング&コミュニティセンター(ZAC)」を有志の専門職者らと共に開設した。当時のことを振り返れば,私個人は後先を考えていたわけではなかった。ただ,船を漕ぎ出すことが必要だと感じられた。その背景には,在日コリアンという集団において個人が抱える/抱えざるを得ない心理的苦悩に対する問題意識と,目の前に広がる「空白地帯」としての在日コリアンに対する臨床心理学的実践の必要性や可能性があった。
本稿では,「在日コリアン」という民族的なマイノリティ集団に焦点を当て,心理職における開業が持つ意味について一側面からの考察を行ってみたい。特に注目するのは,言葉にならなかった声が立ち上がる場としてのカウンセリングの可能性と,その社会的意味である。

Copyright© 2025 Kongo Shuppan All rights reserved.