連載 りれー随筆・427
自然な生活を通して見えてきたこと
前里 ゆきの
pp.630-631
発行日 2020年8月25日
Published Date 2020/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665201603
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いろんな世界が見てみたい。そう思い,思い切って今まで勤めていた大学病院を退職し,オーストラリアへ渡航した。どうせなら日本でできない生活を送りたいと自然が多い田舎で過ごし,1年近く農業をし,テントで過ごしていた。鳥の鳴き声で目覚め,太陽と共に生活をする。洗濯物もできる限り手洗いだ。物に頼らない生活はとても新鮮で,真っ赤な月が昇る景色や時間と共に変わりゆく夕焼け雲,満月の光で影ができること等,自然の美しさや生活の大切さに気付くことができた。また,旅をする中でつらい思いをすることもたくさんあったが,その都度たくさんの人に精神面でも生活面でも支えられた。日本に居た時ももちろん家族や友人,同僚にたくさん支えられていたのだが,そのことを当たり前に感じてしまっていたと反省すると共に,今まで出会った仲間をとても愛おしく感じた。
そんな生活の中で今まで何気なく使っていた生活用品に対して,環境にも人にも優しい自然な物を好むようになった。なぜならば品物によっては,自然由来の物とそうでない物とを比べた時に,品質自体に大きな差はないが自然環境への負担や,畑で働く人々,さらには畑の近くで生活する人々の健康面や生活環境が大きく違うということを知ったからだ。そして日本に帰ってからは,人と環境に優しい助産師になりたい,今までは支えられる側であったが,今度は私が助産師という仕事を通して,人々を支えていきたいと思うようになった。
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