連載 NIPTと優生思想をめぐって・8【最終回】
連載「NIPTと優生思想をめぐって」のまとめ
仁志田 博司
1
1東京女子医科大学
pp.956-962
発行日 2019年11月25日
Published Date 2019/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665201404
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はじめに
2012年,トリプルマーカーなどこれまでの方法に比べ,感度および精度が飛躍的に高い検査である「母体の採血で行われる胎児の染色体を検査する新しい出生前診断(無侵襲的出生前遺伝学的検査,Non-invasive prenatal genetic testing:NIPT)」が,関連専門家による十分な議論がなされないまま日本に導入され,臨床研究としてハイリスク妊婦を対象とした5年間の臨床研究が行われた。その評価,検証が尽くされないうちに一般臨床に組み入れられようとしていることから,本検査法の早急な導入が優生思想に流れる危険があり,立ち止まって考えようという目的で本連載は企画され,本誌4月号から10月号まで,7回にわたり掲載された。
今号では,これまでの分担執筆した各氏による掲載内容のポイントを筆者流に要約し,コメントを加えて読者の理解の一助とする。また2019年7月に,本連載の執筆者を中心として「新型出生前診断(NIPT)が優生思想に流れないために」という学会シンポジウムが開催されたので,その概要を紹介する。さらに本連載の目的の一つが「NIPTをビジネス目的で行う風潮をいかに阻止するか」であったところから,それを対象とした活動も紹介する。
最後に,読者が「わが国におけるNIPTのあるべき姿」を考える糧として,「NIPTが優生思想に流れないために,われわれは具体的にどうしたらよいか」なる私案を提示する。
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