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はじめに
わが国では,若者の性の問題が1990年頃からクローズアップされてきている。最近では性に関する商業的で興味本位な情報等が氾濫し,性行動が開放化・活発化しているのが現状である。財団法人日本性教育協会の2012年の調査1)によると,2006年に行なった調査に比べて2011年の性交経験率は,大学生女子では62.2%から46.0%へ,高校生女子では30.3%から22.5%へと大幅な低下がみられる。また,高校生を含めて全体的に妊娠や性感染症に対する意識は高く,「いつも必ず」避妊を実行する学生が8割に上ると報告しているものの,その一方で,不十分な避妊方法を行なっている者がなお3〜4割存在していることが指摘され,望まない妊娠の増加や人工妊娠中絶の実施につながりかねないと報告している。
思春期は,性的な成熟を含めた身体変化を経験することで「性のめざめ」を体感し,性への興味や関心が高くなり行動化していく時期である2,3)。男女にかかわらず,性や異性に対して興味をもつこと自体は自然なことである。人間には性的自己決定権があるが,その権利を行使するには自己決定能力が必要である。性的自己決定能力とは,性と生殖に関して,自ら判断し,決定し,相互に尊重できる力である。その力は生まれつき備わっているわけではなく,学習によって身につけていかなければならない。
性に関する価値判断が十分に確立し,自らの意思で判断,行動できる性行動の自己決定能力を育てるためには思春期,あるいはそれ以前から適切な性に関する指導や支援を行なうことが重要である。性教育の基本的な使命は,1人ひとりの子どもの自己決定権を行使するための自己決定能力をつけていくことにあり,1992年から学校教育で性教育がカリキュラムの中に位置づけられて系統的に行なわれている。2005年頃からは,性と生殖の専門家である助産師等の医療者も子どもたちへの性教育を積極的に実践している。
静岡県立大学大学院看護学研究科助産学分野(以下,当大学院)では,助産師の資格取得を目指している大学院生(以下,院生)が,思春期を対象に,単に避妊を目的とした教育ではなく,命の大切さを考える性教育を毎年実施している。今回はこの取り組みを報告する。
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