- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
緒言
近年,周産期医療機能の分担および連携強化がうたわれ,A県においても分娩施設の集約化が進んでいる1)。集約後の分娩施設では助産業務が多忙となり,妊産褥婦に対するケア時間の減少が問題とされている2)。また,分娩施設集約に付随し,産後の早期退院の導入が広がっているが,それには,退院後の母親が地域での子育てに1人で悩み,孤立することのないような産後支援が不可欠である3,4)。
2011年の東日本大震災により,A県B市では分娩施設集約や産後の早期退院など周産期医療の問題が一層深刻化し,頼る場所をなくした母親たちは心身に支障をきたしかねないほどストレスフルな状況に置かれた5)。母親たちは自ら妊娠・出産・子育てに対する支援を求め,地元の助産師や支援に入っていた助産師らがその声に応える形で,地域の母親たちとともに母子支援活動を開始した。
地域母子支援活動の効果として,参加する母親が仲間をつくり子育てに関する情報交換が行なえること,気分転換が図れ子育ての不安が軽減できること,子どもにとってはさまざまな人と触れ合い社会関係が拡大することが先行研究で報告されている6-8)。一方で,運営者主体の母子支援は,経済的負担があることや支援の利用が不便なこと,参加者の人間関係が活動参加の妨げになる場合があること7)などの問題が指摘されている。
B市での母子支援活動は,震災から7年が経過した今日も形を変えながら継続しており,母親が利用しやすい環境や母親のニーズを満たす要素があると考えられる。
本研究の目的は,東日本大震災を契機に母親たちの声に応じて始まり継続している母子支援活動に母親が参加する理由,そこで体験したことによる母親自身の変化について明らかにし,今後の母子支援活動への示唆を得ることである。
日本においては少子化が加速し,その対策として厚生労働省は「地域における切れ目ない妊娠出産支援の強化」を掲げ,2015年から産前産後サポート事業や産後ケア事業を開始した9)。本研究は,それら事業の1つのモデルとして,母親のニーズに対応した活動形態を検討する一助になると考える。
Copyright © 2018, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.