連載 バルナバクリニック発 ぶつぶつ通信・135
モルジブでの経験[後編]
冨田 江里子
1
1バルナバクリニック(フィリピン)
pp.968-969
発行日 2015年11月25日
Published Date 2015/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665200358
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現代医療の効果を知らない?
伝統的産婆の不潔な分娩介助を見た私は,母子に何か異常があればすぐに連絡してほしいと伝えて,その場を辞した。もちろん異常になるだろう。だから,帰り道に薬屋に立ち寄ってインド製の抗生物質を購入し,呼び出しにいつでも応えられる用意をした。早めに呼んでくれるといいのに。そう願いながら,私は毎日病院勤務に出かけた。
しかし,待てど暮らせど,連絡はない。地方病院ができてまだ8年ほどのこちらの人にとって,病院は新しい概念のものだ。でも,昔から患者はいたはず。つまり彼らは現代医療以外の方法に親しんでおり,現代医療の効果を体感として知らないのだろう。感染症が起こっているのに我慢しているのかもしれない。それか,ほかの方法で治そうとしているのかも。そう考えて,自分からもう一度,お産をすませた彼女の家を訪ねた。
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