連載 バルナバクリニック発 ぶつぶつ通信・124
2人の産婦の分娩介助
冨田 江里子
1
1バルナバクリニック(フィリピン)
pp.1032-1033
発行日 2014年11月25日
Published Date 2014/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665200038
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フェイとザリカ
朝方4時前にやってきた19歳で1経産のフェイ。1人目の子どもはまだ11か月で,この妊娠はうれしくないらしい。子宮口は来た時点で7cm,陣痛は緩慢だ。彼女が来た10分後,同じく2人目で父親がいない24歳の産婦ザリカがやってきた(ザリカは妊娠を隠すため人目につかない親戚宅で暮らし,子どもはすぐに里子に出した)。どちらも赤ちゃんの下がりが悪く,子宮口は7cm。カーテン1枚で仕切られている産室で2人はベッドから動こうとしなかった。
狭い部屋に2人がいれば,お互いに影響を与え合う。ザリカのほうは多分貧困ではない。その分,声をあげて痛みを表現し「立てば進む」と勧めても聞く耳をもたない。フェイも陣痛は弱く,ときどき「いやよ,産めない,無理よ!」とくり返していた。よい陣痛さえ来ればあとちょっとなのに……。フェイの言葉が心にひっかかりながらも,ザリカに騒がれフェイのそばに行けずにいた。
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