連載 周産期の生命倫理をめぐる旅 あたたかい心を求めて・19
遺伝子をめぐる生命倫理(Ⅰ)
仁志田 博司
1
1東京女子医科大学
pp.630-635
発行日 2014年7月25日
Published Date 2014/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665102862
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
遺伝子にまつわる問題を俯瞰する
前回の出生前診断で着床前に受精卵の遺伝子診断をすることにふれたが,出生前に診断することとは違った次元で,遺伝子に人為的な操作を加えること自体が,倫理的に問題があると考える人が少なくない。それは遺伝子とは人間の根源的な存在を左右するものであり,遺伝子にふれることは人間の尊厳にふれることである,と感じるからである。生命倫理が,医学・医療においてその重要性を増してきたのは,医学の進歩が一般の人々に理解され受け入られる前に,実際の臨床の現場で目の前に新しい事柄が現れるからである。これまでの遺伝の考えとは大きく異なった分子生物学的概念の遺伝子への操作は,その典型的なものであるといえる。
本稿では,学問的に遺伝子とはどのようなもので,現在医療においてどのような操作が加えられており,それらはどのような問題を含んでいるかを,生命倫理の観点から俯瞰してみる。
Copyright © 2014, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.