連載 周産期の生命倫理をめぐる旅 あたたかい心を求めて・15
生殖医療をめぐる倫理的問題(Ⅱ)
仁志田 博司
1
1東京女子医科大学
pp.240-243
発行日 2014年3月25日
Published Date 2014/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665102741
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人工授精(AIH:artificial insemination of husband/AID:artificial insemination of donor)
AIH(配偶者間人工授精)はすでに1799年に自分が尿道下裂であった医師が行なっているごとく,その手技が簡単なところから古くから行なわれていた。倫理的にも,オーソドックスのカソリックが,神聖な生殖行為に人工的な手が加わることに異議を唱えた経緯があるが,夫婦またはそれに準ずる関係の男女間で行なわれる限り,「神の行為にわずかに人為的な操作で手助けをする」という理解で倫理的問題はほぼ解決されている。
AID(非配偶者間人工授精)は,国外では1884年に無精子症の夫の代わりにドナーを得て行なわれており,日本では1949年に慶應義塾大学で最初に行なわれた。その方法は,女性の排卵日に卵胞の大きさを確認し,新鮮精液を調整(洗浄・濃縮など)してチューブで子宮内に注入するという,非侵襲的で簡易であるところから,当時は子どもをもちたい親の希望に応える善意の医療であるという医療側の独断的思考で行なわれ,法的・倫理的議論はほとんどなされていなかった。
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