連載 周産期の生命倫理をめぐる旅 あたたかい心を求めて・24
周産期医療と脳死をめぐる生命倫理(Ⅱ)
仁志田 博司
1
1東京女子医科大学
pp.1122-1125
発行日 2014年12月25日
Published Date 2014/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665200080
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脳死臓器移植の歴史の解説
1967年に南アフリカでChristian Bernard医師が初めて心臓移植を行なったが,そのドナーは黒人であり,レシピエントは白人であった。さらに記録を振り返ると,その脳死判定は医学的に不明瞭であった。その翌年の1968年には,札幌医科大学で和田寿郎により心臓移植が行なわれているが,その事例もドナーの脳死判定およびレシピエントの重症度に医学的疑惑が明らかとなり,和田氏は殺人罪で告訴され,わが国の臓器移植の進歩が20年遅れるもととなった。
ようやくわが国でも,1997年に「臓器の移植に関する法律」(臓器移植法)が成立し,(1)臓器提供の意思,(2)脳死判定同意の意思を書面により表明,(3)遺族が脳死臓器移植を拒まない,(4)15歳以上,という条件が定められた。生命倫理の原則では,「自律性:自分の命と健康に関する本人の意思」が大切であることから,ドナーが自分の意思で臓器を提供してもよい,ということが絶対条件と考えるのが妥当であり,15歳以下の人は意思表示が法的に認められていないので,臓器移植の対象にはならないとされた。さらに小児は,特に新生児は前回事例の解説で述べたように,脳死判定が医学的に困難である。
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