連載 バルナバクリニック発 ぶつぶつ通信・74
亡くなった者が伝える死の受け止め方
冨田 江里子
1
1St. Barnabas Maternity Clinic
pp.472-473
発行日 2010年5月25日
Published Date 2010/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665101659
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お腹の腫れ? それとも…
ある時,友人から電話で「姉のミリアムの下腹部にできた腫瘍らしいものをみてほしい。性交渉もないのに,妊娠しているかのようにお腹が腫れている」という相談を受けた。子宮がんや卵巣嚢腫で下腹部が大きく腫れ上がった患者を実際に数例みたことがあるので,時間を見つけて連れてくるように返事すると,ミリアムは妹とその夜すぐに,私の家へ姿を見せた。無言で診察を始める私の横で,友人は「お腹の腫れと言ってもいろいろあるでしょう? 中には呪いなんかの奇病もあるじゃない? 呪術師に観てもらったら,土地の精霊を怒らせたからだって言うのよ。どうしたらいいのかしら?」などと心配を語り続けている。
お腹をみると,すぐに原因はわかった。正常妊娠だ。すでに子宮底は臍上に達し,胎動も感じられた。確かに妊娠でなければ,悪魔つきといったところだろう。彼らが異常に怖がっていることがかえって面白く感じられた。
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