連載 バルナバクリニック発 ぶつぶつ通信・104
過期産で亡くなる赤ちゃんたち
冨田 江里子
1
1St. Barnabas Maternity Center
pp.1036-1037
発行日 2012年12月25日
Published Date 2012/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665102353
- 有料閲覧
- 文献概要
深夜の2時に「予定日を過ぎているのに病院転送を拒否している産婦がいる」と呼び出しがかかった。クリニックへ行くと,32歳のメリアンが嬉しそうに私を迎えた。予定日を1か月ほど超過したため,ここではお産を受けられないと何度も言い聞かせてきた初産婦だ。過期産でも貧困だから病院に行けないと言い続けていたメリアンは,「ほら! やっと陣痛が来たのよ」と笑顔を浮かべた。
「病院へ行かなかったの? こんなに笑顔ならまだまだね」。メリアンのゆとりのある表情を見ながらベッドの横に行き,おなかに触れ驚いた。メリアンは平気そうだが,子宮が板のように緊張していて,胎児の様子がはっきりしない。常位胎盤の早期剝離だろうか? 子宮底が以前より5cm以上上昇している。外出血はなく,痛みもそれほどではない様子。とにかく心音を探すが,どこにトラウベを置いても気味が悪い静寂があるだけで,私の耳に響く音はなかった。
Copyright © 2012, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.