連載 バルナバクリニック発 ぶつぶつ通信・65
医療が受けられてこその悩みがある
冨田 江里子
1
1St. Barnabas Maternity Clinic
pp.742-743
発行日 2009年8月25日
Published Date 2009/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665101497
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「私はいわゆる誕生死を経験した者です。その時の病院での対応が私の心を今でも傷めています。フィリピンではこういうケースにどういう対応がされているのでしょうか?」ある女性がそう質問した。毎年ビザの都合で一時帰国した機会にお話をさせていただいている,とある会でのことだった。
フィリピンの医療状態,経済状態は,日本的視点で見れば生きている人ですら人として扱われていない状態だ。お金が支払えないのなら診療してもらえないことも多く,一応入院をしていても放置されそのまま亡くなっていく人もいる。お産は病院でしたものの,入院費の支払いができず,数か月も新生児室で人質となって退院できない元気な赤ちゃんがいる。そんな国の状況をこの質問者は想像などできないのであろうし,直前まで私が話していたはずの貧困の状況すら,ほとんど彼女には聞こえていなかったのだろう。
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