連載 りれー随筆・296
母親とともに
田川 典子
pp.744-745
発行日 2009年8月25日
Published Date 2009/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665101498
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認知症の母の姿にうけた衝撃
フルタイムの仕事を退職し早4年が過ぎます。当時勤めていたクリニックでは,分娩介助,母親学級,マタニティヨーガなどパワー全開で仕事をしていました。家族には負担をかけていましたし,身体にはガタがきていました。そんな時,90歳になる母が認知症となり介護が必要となりました。姉が世話をしていましたが,疲れや不眠からうつ症状となり,家庭は崩壊の一歩手前になっていたようです。仕事に追われ,盆と正月,母の誕生日に日帰りで訪れる程度で,親孝行らしいことは何もしていなかったこと,そして姉のことも気にかかり,私は退職を決心しました。
退職翌日から母の元へ行くと,母の状態の深刻さに衝撃をうけました。「お金がない。誰がとった」「大切にしていたオーバーがない。探して」と,1日中同じことの繰り返し。どこに隠したのか見つけることもできず,困り果てました。
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