連載 バルナバクリニック発 ぶつぶつ通信・36
経済性が優先される途上国の医療現場
冨田 江里子
1
1St. Barnabas Maternity Clinic
pp.252-253
発行日 2007年3月25日
Published Date 2007/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100974
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医療が特別な技術や知識であるがゆえ,医療を扱う人が特別扱いされる。医療を施す側も施される側も同じ人間であることがここでは認められない。
お金がないと病院へ行けない
一昨日健診したばかりのエレナが,青い顔でクリニックにやってきた。乗り合いジープが走行中ガタンと跳ねてから,胎動が感じられないという。経過を聞いた私は,車の衝撃ぐらいで胎内が死亡するのか?と単純に疑問を持った。実際,多くの妊婦がトライシクルやジープを毎日のように利用している。気のせいだったらいいのに……と思いながらトラウベで心音を探す。前回元気に私の耳に響いてきた心音は聞こえない。場所を変えトラウベを置く。臍帯雑音,羊水の動く音,何も聞こえない。不気味な静寂が子宮の中に広がっている。
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