60巻記念シリーズ・21世紀へのメッセージ
人口・環境問題と途上国援助
倉恒 匡德
1
1九州大学公衆衛生学
pp.526-527
発行日 1996年8月15日
Published Date 1996/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901524
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世界の人口増加と環境問題
次世紀の公衆衛生問題として,30年来私が最も憂慮していることは,世界の人口と環境の問題である.国連の1992年の人口白書“A World in Balance”1)を読み,危惧の念を一層強めた.このままで,果たして人類の未来はあるのだろうか? 私は,この危機は科学の進歩と,快楽や利潤を追求して止まない人間の“さが”によってもたらされたものであると思う.
産業革命以来,科学は進歩し,先進国においても,開発途上国においても,人間は死ににくくなった.しかし,周知のように,出生の低下が遅れをとり,世界の人口は爆発的に増加を開始し,次世紀の中ごろには,100億を超えると推測されている.しかも,この膨大な数の人間は,先進国の者であれ途上国の者であれ,近代技術がもたらす,より快適なより便利な生活を望んで止まない.消費を高め,開発を進め,とどまる所を知らない.科学はますます進歩し,経済は成長し,この要望に応え続けていくであろう.医学も進歩し,死亡を減らし続けていくであろう.この状態が放置されれば,限りある資源は枯渇し,環境は破壊され,人類の破局が到来することは目に見えている1).
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