特別寄稿
岩手県での新しいプライマリ施設確立への模索―相次ぐ産婦人科閉鎖が深刻な岩手県での試み
小笠原 敏浩
1
1岩手県立釜石病院産婦人科
pp.991-995
発行日 2004年11月1日
Published Date 2004/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100858
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相次ぐ地域での産婦人科休診
岩手県南沿岸部の県立病院で産婦人科勤務医をしている私に,4月の県職員定期人事異動が発令されました。それは県立釜石病院への赴任を伝えるものでした。釜石市は,産科診療所や助産院がなく,出産できる場所は県立釜石病院,釜石市民病院,同じ保健医療圏の県立遠野病院のみでしたが,釜石市民病院と県立遠野病院の産婦人科医が突然病院から引き上げてしまい,産婦人科は休診となりました。その結果,出産場所は県立釜石病院のみとなりました。しかし,施設のベッド数・看護スタッフの不足から市民すべての出産に対応できず,やむを得ず,産婦さんは30~40kmも離れた県立大船渡病院や県立宮古病院での出産を余儀なくされている状況でした。この深刻な状況を解決するため,県の要請を受けて私が県立釜石病院に赴任することになったのです。
ところが,予想もしない問題が生じました。というのも,今度は私がこれまで勤務していた県立高田病院で後任の産婦人科医が確保できなくなったというのです。配置できる産科医がいないのです。この事態には強いショックを受けました。岩手県では,このような状況で産婦人科を休診する病院が相次いでいます。産婦人科医退職や産婦人科医の引き上げに伴い,全国公募やいかなる方法でも産婦人科医を確保できず,産婦人科休診に追い込まれている深刻な状況があります。この状況を解決するためにも,何が原因でこんな異常な事態が起きているのか分析してみました。
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