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はじめに
時代の変遷のなかで,妊産褥婦やその家族の求める助産師像と助産師自身が考える助産師像は,少しずつ変化してきている。一般社会での助産師に対する認識度も変化しているように思われる。
「産婆」時代の助産師は,身近な存在として地域に根ざした活動を行なっていたため,助産を受ける側も提供する側も,目指す思いにそれほどの相違はなかったのではないかと考える。さらに,助産師としての自覚も,現在とは比較にならない強さだったのではないかと思われる。これらの変化の最大要因は,家庭分娩から施設分娩に移行したために起こっている現象にほかならない。そしてこのような変化に伴い,助産師の勤務環境も変質を余儀なくされてしまった。助産師自身が,サラリーマン化したということも,お産の場に大きな影響を与えているといえる。
しかし,こうした状況にあるからこそ,敢えて助産師の「あるべき姿」とはどのようなものであるかをあらためて問うてみたい。真に求められる助産師像とは何か。助産師の考える助産師像をどこにおくのか。答えはさまざまであろうが,1つ確かなことは,その「あるべき姿」に少しでも近づくためには,1人ひとりの助産師が,それぞれがおかれた環境のなかでどのように自律するかにかかっていると考える。
このように勤務助産師の自律の必要性が強く問われ,意識されるようになった一方,産科病棟の混合化がますます加速度を増し,その妨げになっているように思われる。
産科の混合化は,従来から,感染・事故・新生児の連れ去り・ケア不足などさまざまな問題が指摘されてきた。しかし,診療報酬との兼ね合いや少子化などの影響もあり,病院経営の観点から,多くの施設で,混合化は時代の流れであるかのように進み,歯止めが掛けられない状況にある。こうしたなか,助産師としての自分の思いと現実とのギャップにジレンマを抱えている勤務助産師も多い。が,それ以上に,ケアの受け手である妊産褥婦・新生児への影響が懸念される。
いかなる環境であろうと,そこを選んで来院された方に,安全で,安心な母子ケアを提供し,健全な母子関係出発へのサポートをする義務が,助産師にはある。逆にいえば,この助産師としての義務を果たすことは,妊産褥婦や家族の求めに応えることにほかならない。
では,ますます進む混合病棟化の渦中で,助産師はどうあるべきか,私見を述べてみたい。
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