連載 ちょっとオランダまで 周産期ケアと助産活動の実際・8【最終回】
オランダにおける自宅出産と時代の潮流―そのうねりの中での揺らぎ
滝沢 美津子
1
1山梨県立看護大学
pp.265-271
発行日 2004年3月1日
Published Date 2004/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100700
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産褥専門看護師事情
●産褥専門看護師はなぜ多忙?
オランダの周産期ケアの専門家として助産師と並んで重要視される職業に,産褥専門看護師(以下産褥看護師と略)があります。仕事の具体的な内容には前回ふれましたので今回は省略しますが,オランダの至る所で産褥看護師の不足が目だっています。特に大都市圏とオランダ南部は深刻です。オランダの出産ラッシュで産後の母子ケアの要請は高く,産褥看護師センターは供給をはるかに上回る需要に押されているのが実情です。
この産褥看護師の仕事や助産師の仕事は専門性が高いこと,母子の生命を扱うという重大な責任もあり,身体的,精神的,社会的に重労働といえます。しかし,その労働量と労働の質に見合った給料が得られる確実な保証はありません。一般的には多くの女性が,職業を選択する場合に労働に見合った報酬が受けられない仕事に関しては,生活面で最適な職業とはいえないと言明します。女性はより好条件の労働市場を好み,結果的に他の職業を選択するようになります。仕事の内容や社会的評価も含めてやり甲斐があるとわかっていても実務的な労働量と報酬を秤にかけると,やはり他の職業にしようということになるのでしょう。したがって助産師や産褥看護師は敬遠されやすく,労働市場は活性化されにくくなります。そこへ持ってきて,出産ラッシュ,人手不足,需要と供給の差の拡大……と,更なる多忙化という悪循環が生じているのです。
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