連載 今月のニュース診断
東京都による性教育弾圧―子どもたちの考える力・生きる力を消去するための「教育改革」に抗して
加藤 秀一
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1明治学院大学社会学部社会学・性現象論
pp.188-189
発行日 2004年3月1日
Published Date 2004/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100681
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七生養護学校への弾圧
私たちは中学・高校の歴史の時間に,戦前――この表現ももはや「どの戦争の前か」を明示することなしには使いづらくなってきたが――の教育空間に関わる弾圧について学んできた。けれども,教科書に登場する「滝川事件」や「天皇機関説問題」といった出来事は,戦後生まれの人たちにとってはるか昔のことであり,リアリティのない歴史の1コマにすぎなかったのではないだろうか。こうした事件の名称や年号を,試験のために必死で暗記したものの,その中身についてはもう覚えていないという経験をお持ちの方は少なくないと思う。
けれども,世界有数の極右主義者を知事として戴く東京都で,いま進行している教育弾圧を,同じように見過ごしてはならないだろう。なぜなら,もしもそれがこのまま押し進められるなら,数10年後にこの事件が歴史の教科書に載るときには,いま私たちが戦前の事件をふり返るときと同じように,未来の若者たちがそれを「暗い時代」の幕開けを象徴する史実として学ぶことになるだろうからである。
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