特別企画 国立国際医療センターでのHIV陽性妊婦の支援
①HIV感染症の現状と,母子感染を防ぐガイドライン
源河 いくみ
1
1国立国際医療センターACC
pp.1048-1051
発行日 2003年12月1日
Published Date 2003/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100631
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HIV感染症の現状
1981年,米国で同性愛好者の男性に免疫低下状態ではないと通常おこらないようなまれなカリニ肺炎やカポジ肉腫の発症が報告され,これが最初のエイズの症例報告であった1)。その後,血友病患者にもカリニ肺炎が報告された。当時は性交渉や血液を介して伝搬し免疫不全を引き起こす原因不明の病気であったが,その後1983年にHuman Immunodeficiency virus(以下,HIV)が病原体であることが判明した。
エイズ流行の初期は有効な治療薬がなく進行したエイズ症例は死を待つような病気であり,1987年に最初のジドブジン(=AZT)が開発されても単剤ではHIVウイルスを抑制し免疫状態を回復することは困難であった。しかし,1996年にプロテアーゼ阻害薬が開発され,現在の最低3剤を用いた強力な多剤併用療法:Highly Active Anti Retroviral Therapy(=HAART)が治療の主流になるとHIVウイルスを抑制し,免疫能をある程度改善することが可能となった。このことによりHIV患者の日和見感染の罹患率や死亡率が減少し予後が大きく改善し,現在はもはや死を待つような病気ではなくなった2)。HAARTはkey drugであるプロテアーゼ阻害薬か非核酸系逆転写阻害薬と2剤の核酸系逆転写阻害薬の組み合わせで行なう。
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