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第1土曜特集 HIVの発見から40年――医学はどう戦ったか,これからどう戦うのか
HIV/AIDSとその治療の新展開
HIV母子感染対策
Prevention of mother-to-child transmission of HIV
田沼 順子
1
Junko TANUMA
1
1国立国際医療研究センターエイズ治療・研究開発センター
キーワード:
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)母子感染
,
抗HIV療法(ART)
Keyword:
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)母子感染
,
抗HIV療法(ART)
pp.689-693
発行日 2023年3月4日
Published Date 2023/3/4
DOI https://doi.org/10.32118/ayu28409689
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母子感染対策が行われていない場合,ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の母子感染の確率は15~45%といわれている.HIV母子感染対策には,妊婦の早期HIV診断,妊娠中の抗HIV療法,陣痛発来前の選択的帝王切開術,分娩時のジドブジン(AZT)点滴,出生児に対する予防的抗HIV薬投与,出生児に対する人工乳哺育が含まれ,状況に応じて選択される.最も重要なのは母親に対する抗HIV療法(ART)で,すべての妊婦にHIV検査およびHIV感染が判明したら,ただちにARTを開始することが推奨されている.世界的にもHIV母子感染の根絶に向けた取り組みが積極的に行われているが,近年のHIV母子感染例の減少は,女性に対する早期HIV診断と早期ART開始が広まったことによると考えられる.生殖補助医療や分娩を取り扱う医療現場では,いまだHIV感染者に対する差別がみられる.HIV感染とともに生きる女性が,感染していない女性と同様の人生を送ることができる社会の実現が望まれる.
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