特集 「ナラティヴ」を読む
不妊治療患者へのアプローチ―「外来での“かかわり”をとおして」を読んで
茅島 江子
1
1東京慈恵会医科大学医学部看護学科
pp.831-836
発行日 2003年10月1日
Published Date 2003/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100606
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はじめに
多くの外来の看護者は,自分の本来の役割を果たせなくて悩んでいます。外来における看護の役割が,通院患者の自然の治癒力を発揮させ,健康回復をめざせるように生活過程を整えたり,診療の補助業務をとおして治療過程を支援することにあるということは十分承知はしています。しかし,限られた時間の中で,通院患者への診療補助業務に追われていることが多く,1人ひとりの患者の声に耳を傾ける余裕がないというのが,現状なのではないでしょうか。
そのような外来看護の現実の中で,野原ヒロ子さんは,『助産雑誌』本年4号の「外来での“かかわり”をとおして」で,Gさんという不妊治療患者とのかかわりを振り返りました。
野原さんは,外来では患者との会話が少なく,断片的なかかわりが多かったといっています。患者が語れない,看護者も語れない,そんな外来看護の場が,野原さんの物語の舞台となります。忙しさという現実の中で,ジレンマを抱える野原さんの語りを読みながら,この物語が実は自分にもあてはまるものであると思われた読者は多かったのではないでしょうか。私もまた,野原さんの語りを読みながら,いつの間にか,私が臨床で働いていた頃の経験の中から,自分自身の外来看護を振り返っていました。
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