特集 ―当事者に学ぶ―不妊治療を受ける人々の声
コラム
不妊相談における私たちのアプローチ
楢原 久司
1
1大分大学医学部産科婦人科
pp.916
発行日 2005年10月1日
Published Date 2005/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100296
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大分県不妊専門相談センターで,私が医師の立場から面談を担当させていただいて5年目になります。助産師であり不妊カウンセラーの中島さんが電話相談を担当し,面談がさらに必要と考えられる方には,中島さんと私が対応しています。当センターは,少子化・子育て支援の一環として全国的にも早い時期から活動を始め,延べ2,100名の相談実績があります。この実績は,1人ひとりのさまざまな問題や悩みに真摯に応えようとした軌跡であると言っても過言ではありません。
実際,予想をはるかに超える多様な相談があります。その理由として,生殖医学・技術が日々高度化し,インターネットなどからの情報も氾濫しているため,自分に合った検査や治療方法が何かを判断できなくなっていること,また,多様すぎて分類不能とも言える心身の悩みを非常に多くの方が抱えていることが挙げられます。妊娠しにくい状態(不妊)から生じる不安や恐れが多様であるのは,種の保存という生物固有の本能的な欲求が根底にあるものの,人間においてはさまざまな社会・経済的な背景や年齢・身体・精神的な影響を受けやすいからであると思われます。
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