特集 周産期のナラティヴ―助産師の語りの世界から
助産師として立ち止まって
大和田 智子
1
1あきら産婦人科クリニック
pp.285-290
発行日 2003年4月1日
Published Date 2003/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100498
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「もう,ここには来ません」
「もう,ここには来ません。恐かった」。そう言い残してAさんは退院していったという。
Aさんと出会ったのは,彼女が切迫流産で当院に入院した時のことだった。30歳,中学校教諭。初めての妊娠5週2日で下腹痛を主訴に入院した。
同じ部屋には数日前に妊娠中毒症で入院している高校教諭がいた。2人とも初めての妊娠で,初めての入院だった。お互いに同業者だったためかすぐにうちとけたようで,家族のこと,仕事のこと,妊娠のことなどについて2人で話をしていた。ちょうどテスト期間と重なったため,Aさんは入院中もパソコンを使ってテスト問題を作るなど,デスクワークをすることも多かった。
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