新人理学療法士へのメッセージ
立ち止まる勇気
稲岡 秀陽
1
1京都九条病院リハビリテーション科
pp.338-339
発行日 2003年4月1日
Published Date 2003/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551100954
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私がPTとなった頃は,「先生,先生」と呼ばれ,貴重な有資格者としての扱いを受けていました.国家試験さえ受かればすぐにいい気になれる時代でした.というより,知識,技術もないのに,自分でその気になっていただけかもしれません.そこから私の失敗が始まっていたわけです.
甘い生活
患者は自己治癒力である程度まで回復します.時間がかかって,ちょっと違った方向にあっても,改善傾向にあるように見えます.それを私は自分が治したかのように,いい気になっていたわけです.でも,日々の生活に追われ,開設準備に追われ,その生ぬるい,甘い生活に浸ってしまう楽さから抜けきれず,何年かが経過しました.気づいたときには,もう既にそのことに目を向けるのが怖く,より一層自分に甘くなっていました.卒業時は,多疾患をみて,治療のできるPTを夢見ていました〔もしかしたらそのテーマ(目標)が大きすぎて,現実的でなく,甘い方向に足を向ける第一歩だったのかもしれないと今は反省のみです〕.そして,口だけは立派になり,蓋を開けたら,どうしようもない名ばかりのPTになっていたわけです.
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