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要旨
平成15年度の厚生労働省医療機関関係者養成確保対策費等補助金看護職員確保対策特別事業による調査によると,全国規模で一般産科病棟において産科単独で病棟運営ができているのは8.6%に過ぎず,その多くは,許可病床数501床以上の大規模病院に集中し,産科病床21床以上の比較的大きな産科病棟に限定されており,その他は婦人科や内科ひいては小児科などとの混合病棟であることが判明した。しかも産婦人科群・混合群での看護管理者の不安・心配事のアンケート内容では,感染・ケア不足の順であり,感染の不安の大部分は,両群ともに婦人科や内科の成人患者(ターミナルケアも含まれる)の持つMRSAや肺炎の病原菌が,母子とくに新生児へ感染することを危惧していた。ケア不足の内容は,産婦人科群では重症患者や分娩中の産婦が優先され,分娩第1期の産婦へのケアや母子へのケアに時間がなくなること,混合群では母子へのケアが十分に行なえないだけではなく,他科の患者のケアも行ないえなくなることが問題であった。出産は病気ではなく母子は健康な人であることが,ケアが後回しにされる大きな理由となっている。
今後の産科病棟は,地域の要望に合わせて健康棟として運営されてゆくべき施策が重要となってくる。さらに児童虐待が大きな問題となっている昨今,その予防は周産期に集約される。すなわち,良いお産から良い子育てにつなげられる体制作りが最も必要な時期に来ている。しかし,上述したような混合病棟体制は,先進国のなかでは日本にしかなく,分娩を含む周産期に母親そして家族へさらなる辛さを持ち込んでしまう体制であることはいうまでもない。周産期医療体制としては早急に改善されなければ,将来に禍根を残す大きな問題であることを,周産期関係の医療者と共に行政も認識する必要がある。
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