巻頭言
絶滅危惧種?
福田 知雄
1
Tomoo FUKUDA
1
1埼玉医科大学総合医療センター皮膚科,教授
pp.263-264
発行日 2020年3月1日
Published Date 2020/3/1
DOI https://doi.org/10.18888/hi.0000001826
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- 文献概要
巻頭言の依頼をいただき,何を書こうか迷ったが,奇をてらわず,自分が一番関わってきた皮膚真菌症の話を書くことに決めた。私が慶應義塾大学医学部を卒業したのが1987年。当時は初期臨床研修制度が義務化されておらず,スーパーローテを回ることなく,卒業後直ちに皮膚科に入局した。慶應義塾大学で2年間研修を積んだ後,国立東京第二病院皮膚科に2年間出向,1991年に慶應義塾大学に戻り,縁あって真菌班の研究室に配属された。当時の大学には西川武二教授,原田敬之助教授,仲弥講師など5人の真菌症を専門とするメンバーがいて,多くのことを教わり,仲弥先生には学位指導も受けた。私の後にも2人の優秀な後輩が真菌班に入ってきた2000年代前半までが真菌班の黄金期だったように思われる。2020年オリンピックイヤーを迎えた現在,慶應義塾大学に真菌班はすでになく,以前は当然であった皮膚科医自ら真菌培養,同定を行っている施設が少なくなった。日本医真菌学会に所属し,かつ大学病院に残っている皮膚科医の数が年々減っている。皮膚真菌症を専門とする皮膚科医は今や絶滅危惧種状態にある。皮膚真菌症は,白癬だけでも日本人の2割以上が罹患しているとされる,皮膚科医が日常診療のなかでもっとも遭遇する確率の高い皮膚疾患群の一つである。なくすわけにはいかない大切な分野であり,オリンピックイヤーを機に何とか盛り返していけないものかと考えている。
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