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はじめに
女性の人生のなかで,忘れられない思い出となる出産体験。その後長く続く子育てのスタート地点であり,誰もが大切にされてはじめて,他の人を愛し慈しみ育てることが容易になる。「健やか親子21」の目標には,妊娠・出産の安全性と快適さの確保があげられ,利用者が希望するサービスが選択できるよう医療施設における取り組みを推進するとあるが,それには程遠い現実がある。先ごろ,社団法人日本助産師会から「産科病棟における混合化の実態調査に関する報告書」が発行された1)。これは厚生労働省の医療関係者養成確保対策費等補助金看護職員確保対策特別事業として実施されたもので,日本助産学会も調査の実施・分析に協力した。
混合病棟化による弊害が報告され始めたのは,数年前からであるが,今回の報告書はその動きに歯止めを掛けることが急務であることをあらためて知らせている。
※※※ 調査は全国の産科を標榜する1800病院中1000病院へ調査を依頼し,533病院からの回答を得ている。うち「産科」だけは8.6%(46病院)であり,「産科と婦人科の病棟」が16.7%(89病院),残りの74.7%(389病院)が「産科以外に,小児科・内科・外科・整形外科・救急などの混合病棟」という結果であった。
筆者らが1999年に全国57施設の100床以上の総合病院で,助産ケアの質を評価することを目的に調査したときには,産科単独は29.8%であり,産科・婦人科の混合が43.9%,産婦人科以外の他科との混合は26.3%であった2)。今回の調査と比べると,対象施設数が異なるが,産婦人科以外の他科との混合化が優勢になっていることがわかる。
本来,産科や健康な新生児のケアは,健康棟として独立していることが好ましい。しかしながら,現実は産婦や新生児は病気治療のために入院を余儀なくされている病む人々と同じフロアで,同一の職員によってケアされている。出産環境としての混合病棟の問題点をもう一度認識し,助産師の専門家としての智恵を絞って改善策を考えだしたい。
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