特集 院内感染防止のための看護マネジメント―MRSAにどう対処するか
MRSAの実態とその病院感染対策
小林 寛伊
1,2
1東京大学医学部
2院内感染対策部
pp.214-219
発行日 1991年7月15日
Published Date 1991/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686901826
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
黄色ブドウ球菌Staphylococcus aureusのうち,ペニシリン耐性黄色ブドウ球菌に対して開発されたメチシリンmethicillinに耐性となったものを,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌methicillin-resistant S aureus(MRSA)と呼ぶが,これらの菌は,ヒトの鼻腔,咽頭,皮膚,消化管内などに常在しうるものであり,感染に対して抵抗性の低い患者,つまり易感染患者compromised host(patient)に対して,感染を生ずる危険性が高い.しかし,健常人にとっては,危険性は低い.
このように,MRSA感染は,健康保菌者を介して,内因性感染endogenous infection(自己感染self infection)あるいは外因性感染exogenousinfection(交差感染cross-infection)として起こってくる場合と,感染患者からの直接的,間接的な交差汚染cross-contaminationによって起こってくる場合とがある.特に前者の場合が,MRSA感染の特徴でもあり,保菌者の内因性感染は,β-ラクタム系抗生物質投与により,菌交代現象が生じ,その結果,菌交代症として発症してくる場合が多い.
Copyright © 1991, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.