連載 今月のニュース診断
「熟年離婚」考
加藤 秀一
1
1明治学院大学社会学部
pp.228-229
発行日 2006年3月1日
Published Date 2006/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100065
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TVドラマ「熟年離婚」
残念ながら観る機会はなかったのだが,昨年後半に最も話題を呼んだTVドラマは「熟年離婚」(テレビ朝日系列)だった。キムタク物以外で視聴率20%を超えたというのだから,最近停滞気味のドラマ界では久々の大ヒットだったと言えるだろう。
渡哲也演じる篤実なサラリーマンの夫・豊原幸太郎が,松坂慶子演じる専業主婦の妻・豊原洋子から,定年退職当日に離婚を切り出されるという初回の設定。僕が人から聞いて思わず唸ったのは,その日の幸太郎の行動だった。妻の底知れない空虚感にみじんも気づかない彼は,退職後に老夫婦仲睦まじく海外旅行を楽しもうと,自分だけでなく妻の分の英会話学校まで,本人には何の断りもなしに,勝手に予約してきてしまったのである(細部は不正確かもしれない)。この幸太郎という人物の,決して悪い人間ではないが限りなく鈍感な性向を,何とも的確に表現するエピソードではないか。脚本はかなり練り上げられたものだったのだろう。
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