私たちの法律第5回
離婚とその原因
遠藤 順子
pp.52-55
発行日 1971年8月1日
Published Date 1971/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204188
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協議離婚の無効と取消
無効な結婚や取消すべき結婚があった(5月号参照)ように,協議離婚についても無効なものや取消すべきものがあります。無効な離婚とは,離婚の意思を欠く場合で,具体的に申し上げますと①当事者のいっぽうあるいは双方が知らない間に何人かによって勝手に離婚届がなされたとき ②当事者がいったんは離婚するつもりで届出書に署名捺印したが,届出が受理される前に離婚の意思を撤回し,戸籍係に離婚届を受付けないよう申出たり(これを協議離婚不受理願といいます),あるいは離婚届の提出を委任した人から届出書を返還してもらった場合 ③実際には離婚する意思がないのに債権者の差押などを免れる必要上,夫婦が共謀して協議離婚届をした場合などです。①や③の事例はまれですが,②の例はかなり見受けられます。なお,協議離婚不受理願は,②のような場合ばかりでなく,自分には離婚の意思がないのに,相手方または相手方側の誰かによって,無断で協議離婚届が出されるかもしれない状況がある時にも利用すれば,前記①の事態を未然に防止できるという効用があります。ちょっとした注意で,大きな不幸と面倒を防ぐことができる大切な知識といえましょう。
次に取消すべき離婚とは,詐欺または強迫による協議離婚を指します。しかし,実際に詐欺や強迫が認められる例は少なく,仮りに詐欺や強迫が認められる事例であっても,手続としては家庭裁判所の審判あるいは通常裁判所の離婚取消の判決を受けるまでは,離婚の記載を抹消することはできません。
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