社会病理と精神衛生・3
離婚
高木 隆郎
1
1京大精神科
pp.81-83
発行日 1963年11月1日
Published Date 1963/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912072
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婚姻の解消
離婚とは夫婦という対人関係の破綻であり,また社会の一構成単位であろ家族の崩壊を意味するから,たしかにそれは精神衛生と社会病理の両方に関係した事象であるけれども.しかし逆に夫婦関係の破綻や家族の崩壊は必ずしも離婚という結果を導くとかぎらない。離婚という事象はむしろ法律上の手続きによって成立する。
まず第一に,離婚の前提条件として,絶対に必要なのは,男女が結婚をしている—配偶関係にあること,すなわち結姻届を役所に出した夫婦の関係にあるということである。だから,ある男女が同棲をしていて《別れた》とか結婚式をあげてもしばらく届けを出さず,そうこうするうちあの嫁は気にいらぬとて実家にかえされたとか,あるいはこのごろときどき耳にする約束結婚(おそらく婚姻届けは出さないのだろう)の期限がきれて,そのまままた他人の関係にもどるなどというのは離婚ではない。離婚の第2の条件は,協議離婚か裁判離婚かどちらかの民法上有効な手続きが完了していることである。だから,夫がよその女と駆落ちしてもうあきらめ,妻のほうも別の男といっしょになっているとか,夫婦不和のため事実上別居していても,法的に認められなければいかなる書類をしらべても離婚という統計には上がってこない。それらは,広く性の社会病理現象であるにすぎない。
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