特集 結婚と公衆衛生
結婚と離婚
野々宮 喬史
1
1厚生省人口動態統計課
pp.571-578
発行日 1972年9月15日
Published Date 1972/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204541
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一般に婚姻形態は,その国の習慣や風習はもちろん,時代によっても異なるので容易に統計では判断のできないことはいうまでもありません.特にその国の婚姻制度との不適応性の問題があって,統計上の集団化や等質性の点で難しい事柄が多いわけです.わが国の人口動態統計は,官庁統計としては唯一の婚姻統計ですが,婚姻は法制上届出婚となっており,届出を婚姻の成立要件としていますから,当然この戸籍届の集計に過ぎない人口動態統計では内縁についての把握は不可能です.いわばこの法制に適応しない婚姻関係は陰の部分とでもいうべき集団で,しいてあげれば国勢調査の配偶関係別人口では事実婚をも含めて捉えていますので,情報のシステムとしてはいわば国勢調査でストックとして捉え,一方人口動態統計では,そのうちの届出婚の発生と解消(離婚—死別・離別)をフローとして捉えることによって,一応基礎データとしての交絡は保たれてはおります.またその他の資料は,特殊な調査が若干あるようです.
しかし,いずれに致しましても,わが国の婚姻制度がmonogamyとして,しかも届出主義であり,資本主義社会の一先進国家としての法制上の理念と実際の現実との矛盾が婚姻の社会問題となるのですから,自ずとそれらの調査の方向もそのギャップに向うことは自然でしょう.
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