私たちの法律・4
離婚の周辺から
遠藤 順子
pp.50-53
発行日 1971年7月1日
Published Date 1971/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204173
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「離婚」を介してはじめて知る「結婚」の意義
最近,1冊の大変興味深い本を読みました。それは,「現代の離婚問題」(販価2500円)と題する本で,離婚を歴史的,社会的,倫理的,心理的,臨床的,法律的見地から総合的に考察したものです。ちょっと,おかたいという欠点はありましたが,はなはだ示唆に富んでいて,今までの離婚に関する出版物の大半が,単純な法文の解説か,離婚率の推移を示すデーター,はたまた女性週刊誌などの興味本位の記述などにとまっていたのに比べ,初めて離婚の多様性に正面からとりくもうとしたものといえました。
離婚は結婚生活の破局です。それだけに離婚は最も人間的に生々しいものです。離婚せざるを得ない状態に立ち到った時,人はその赤裸々な姿をさらけ出します。だから,逆にいえば,離婚こそ,「結婚とは何か」を問いかけているともいえるのです。しかし,現実に離婚問題の渦中に置かれた人は,目前の問題に目を奪われ,疲れ果ててしまって,冷静な立場から離婚の意義を理解するゆとりをもちません。そこで,このような不幸な状態に陥る前に,あらかじめ離婚や結婚について研究しておくことはきわめて大切なのです。そのためには,従来のような類型的な出版物だけでは全く役に立たないわけで,広く総合的な分野での研究がすすめられるとともに,これら研究の成果が,誰にでも理解できるわかりやすい文章で,しかももっと手ごろな値段で普及されなければならないのです。さて,前置きはこのくらいにして,できるだけ広い視野から離婚を考察してみることにいたしましょう。
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